10月23日(水)14:00~四日市市文化会館とオンラインにて「適正取引・価格転嫁支援セミナー」を三重同友会・金融機関連携地域活性化協議会主催にて開催いたしました。
今回のセミナーでは、公正取引員会より下請法と労務費指針の概要の説明と三重県よろず支援拠点より価格交渉に関する実践的な手法の説明、そして中小企業支援ネットワーク「み・エールbiz」より中小企業支援の取組について紹介されました。
第1部では、下請法と価格交渉の指針に焦点を当て、特に親事業者が下請事業者に対して行う「買いたたき」行為の防止について解説がありました。
下請法は、親事業者が不当な取引条件を下請事業者に押し付けることを防ぐための法律であり、具体的には短納期での発注や一方的な単価引き下げが「買いたたき」に該当します。これらを防ぐためには、発注者と下請事業者が十分な協議を行うことが重要です。また、労務費の上昇分を適切に取引価格に反映させるためのガイドラインが設けられており、発注者は積極的に協議の場を設け、労務費の上昇を価格に転嫁することが求められています。
公正取引委員会は、このような価格転嫁の状況を監視し、違反があれば厳しく対処する姿勢を示しており、全体として、親事業者と下請事業者の公正な取引関係の確保が強調されました。
第2部では、中小企業が価格転嫁を適切に行うための具体的な手法や、値上げ交渉の進め方に焦点が当てられました。
まず、近年のコスト上昇に対する価格転嫁の状況が紹介され、帝国データバンクの調査によれば、約8割の企業が何らかの形で価格転嫁を実現している一方で、約1割の企業は全く転嫁できていないという現状が報告されました。
原材料費や労務費の高騰により、価格交渉が避けられない状況にある企業が増えており、単なるコスト削減では対応しきれない時代に入っています。特に、労務費の上昇は従業員の確保や事業の持続的な成長に直結する問題であり、稲盛和夫氏の言葉「値決めは経営である」を引用し、適正な利益を確保することの重要性が強調されました。
価格交渉を成功させるためには、事前準備が欠かせません。自社の強みや利益率、競合との比較を把握し、価格交渉における自社の立場を明確にする必要があります。また、価格以外の交渉項目(納期や品質、支払い条件など)を整理し、交渉を多角的に進めることが効果的です。
さらに、具体的な準備として、製品別の原価を把握し、値上げの根拠となるデータを収集することが求められます。労務費や原材料費の変動を反映させた計算式を活用し、取引先との信頼関係を日頃から築くことが交渉成功の鍵とされました。
また、講演では中長期的な対策として、既存顧客との関係維持や新規顧客の開拓も提案されました。価格交渉は一度きりで終わるものではなく、外部環境の変化に応じて継続的に調整していく必要があります。
第3部では、三重県中小企業支援ネットワーク推進事業「み・エールbiz」から中小企業支援の具体的な取組が紹介されました。この事業は、中小企業が経営課題を解決し、収益改善を図ることを目的としており、経営改善コーディネーターが商工団体や金融機関と連携して、企業の課題を分析し、行動計画を策定・実行することで支援を行っています。講演では、製造業と道路貨物運送業の2つの事例が紹介され、いずれも自社の原価を把握し、取引先との価格交渉を進めた成功例が示されました。
価格交渉においては、根拠となる資料の用意と日常的なコミュニケーションが信頼関係構築に不可欠であり、単に値上げを要求するだけでなく、合理化やコスト削減の取り組みを並行して行うことが重要とされています。
全体を通して、下請事業者との公正な取引関係の維持と価格交渉の実践的な手法、中小企業支援ネットワークの取組から、企業が持続的に成長するための重要なポイントを学びあいました。